卒業に寄せて
お世話になりましたリクルートを卒業します。
この2年半は担当するエリアで自分ができることを考え奔走した日々でした。
それは苦しくも楽しく充実した日々でした。自分と向き合いマーケットと向き合い、どれを思い出しても色褪せない思い出でいっぱいです。
そして「仕事」とは何か、「働く」とは何かを体を動かしながら我究し続けた日々でした。いっしょにこの素晴らしい事業を創り上げることができて本当に良かったです。
リクルートはマッチングによって人々の自己実現を叶えてきた企業だと思っています。
人は何かを選択する時に個性が表れます。
お店選びにも、住まい探しにも、仕事選びにも、その人が表れます。その個性を実現させるには選択肢が無ければ選ぶことはできません。そしてその人の思いが叶い思い描いた、食事の時間や、ライフスタイルが手に入り、希望した仕事に就けたのなら自己実現と言えるのではないでしょうか。
これらの人が持つ欲求に応えてきたのがリクルートだと思います。
しかし、選択肢が無ければその人の個性は表れることがありません。多くの選択肢から選べる事が自由そのもので自己実現をするためものです。そして社会に多様性があることを表していると思います。
前職の話
前職でアートオークションの会社に勤めていた際に、浮世絵をオークションで出品した経験があります。自社で扱った事がない商品だったのですが、理由は、ただやったことがなかっただけでした。「自分たちが価値のわからないものは売ってはいけない」という考え方があり、客先で見ても値段が付けられないため見て見ぬ振りをしていました。この考え方に疑問を持っていました。
オークションという売買機能の本質は「市場(需要と供給)に価格を決めさせることができること」のはずであり、価格の査定が難しい商材であるのなら、なおさら日本最大のオークションハウスがやるべきことなのではないのか。
先輩や上司は客先に浮世絵があったとしても、見て見ぬ振りをしていました。初めて希少な浮世絵を預かり持ち帰った際に、先輩から言われた一言を今でも鮮明に覚えています。
「それ誰が買うの?」
誰も買わないよという意味が込められていた気がしました。
心に火が付いた瞬間でした。
商材を扱えるようになるため図書館に通い、作品の知識を専門書を読んで勉強しオークションカタログのキャプションにこだわり、出品者にも開催まで入札状況を逐次連絡しました。
良い営業はマーケターで、良いマーケターは営業
オークション当日、浮世絵は無事に競り上がり落札されていきました。
自社サービスの本質を考え抜く事、顧客が求めるものを素直に売る事、というシンプルで強力な力を思い知ったと同時に、自分の中でブレイクスルーが起きた瞬間でした。
「良い営業はマーケターで、良いマーケターは営業」
浮世絵という新しいマーケットを創った経験を、次の人材の仕事でも自分の提案で新しいマーケットを創ろう、そう思っていました。
感じていた"不"と入社理由の達成
自分が感じていた"不"は年齢でした。休学と留年をして学部卒で院卒以上の年でしたし、ビジネスと関係の無いことをしていたので、ひとたび一般化されてしまえば均一された基準の中では「頑張ったんだね」という反応しか得られませんでした。
「これからの行動で全てを正解に変えてやる」
この経験が「職務遂行能力の本質を問い、職務遂行能力における年齢を問い直し雇用を創出する」原動力となりました。
「もう〇〇歳じゃん」「〇〇歳だから」と言われる、そういった年齢にまつわる広告や投稿を見る度に、社会からの見られ方を意識するようになってしまいました。若くして成功した同年代の発信や、射幸心を煽るようなSNSの発信を目にする事でも焦りや不安が膨らんでいきました。
この年にはこのくらいの役職にいて、このくらいの給与をもらっていて、、、年齢相応に振る舞わないといけない。
きっと同じ気持ちの人がいて、年齢を理由に挑戦を止めてしまっているのではないか。そう思っていました。
提案型の営業を初めてから、採用側の本音、年齢緩和の厳しさを知りました。
でもそれだけ、自分の提案で年齢要件を緩和できた際の嬉しさはひとしおでした。
年齢要件を緩和させなければ就業が決まらなかった方がその職場で活躍するたびに、「職務遂行能力は年齢では決まらない。誰もがいつからでも仕事を通じて変わる機会を得ることができる」と実感していきました。入社理由を達成し始めていました。
新たな挑戦
そんなある日、廃業した企業に勤めていたスタッフと出会いました。
仕事を紹介することで、生活は維持できましたが、本当にしたかったのはその会社で勤め上げることでした。
明確な意志を持ち仕事を選んでいる人はどれだけもいないのに。。。
そして、日本の核家族化や中小企業経営者の高齢化に伴う事業承継問題を知り、これまでの雇用を創る仕事から雇用を守る仕事をしたいと思うようになりました。雇用の存続の大切さや企業の持続的な成長に問題意識を持つようになりました。
固有の文化を持つ企業は社会の財産です。多様な企業が、多様な働き方、多様な生き方を生み、社会に多様性をもたらすと信じています。
高度経済成長期に、豊かになるんだ、世界に追いつくんだ、と今の日本を創り上げて来た先人たちの遺産を未来に繋げて、この素晴らしい国を支える一翼を担える力をつけるためと志高く持ち、新しいフィールドで挑戦をすることに決めました。
採用マーケットのニーズと法人の新規開拓、人材派遣の営業経験とがタイミングよく合致し転職が実現しました。
同一労働同一賃金制、社会保険料の引き上げが、人材派遣会社の経営を圧迫しています。事業の存続のためにM&Aを検討する企業がさらに増えていきます。
派遣という事業の本質
派遣は雇用期間が定められた有期雇用です。そして転職や部署を変えて就業することも他の働き方に比べると非常に多いです。転職を経験していることと有期の雇用で働いていた事、これは最大の武器でした。
「”らしさ”の数だけ働き方がある社会」
人材事業の本質は企業には「期待値を売ること」と求職者には「自己実現を叶えること」とがありこれは派遣事業にも当てはまると思います。ですがなんとなく違う気がする、まだなにかある気がする。
辿り着いたのは「"らしさ"と社会とを繋ぐこと」でした。
派遣会社の就業フォローのように「労働者と使用者の間に入ること」ができる仕事は他にありません。これはこの事業の本質です。
派遣先の"らしさ"とスタッフの"らしさ"をマッチングさせ繋ぐこと。
これが辿り着いた本質でした。
派遣元の就業フォローや待遇改善にはこれらのミッションが含まれています。
営業が介在することで、スタッフさんが気持ちよく過ごせその結果就業が継続し、本来の力を発揮でき直接雇用が決まることもありました。継続を悩んでいる状態から直接雇用を実現したこともあります。ですから直接雇用が決まったスタッフにも最後の挨拶に訪問していました。本当に価値のある行動だと思ったからです。
時代の変化が激しく流動的な労務供給が求められる産業に対応できているのは紛れもなく彼らのおかげです。非正規雇用の上に正規雇用が成り立っていると言っても過言ではありません。派遣が浸透していない国では失業率が高いです。特に若年層で。失業か正規雇用かしかないから、正規雇用になれなかったら働く事そのものを放棄してしまうのだと思います。
「働かざる者食うべからず」
この言葉がどれだけの人を苦しめて来たでしょうか。
働いている事で貢献している実感を得て、社会と繋がりを感じられる時間、働き方を尊重される、そんな世の中が目指すべき誇れる社会だと思います。
リクルートという会社
ここに来なかったら出来なかった経験をたくさんさせてもらう事ができました。
営業という職種のレベルアップはもちろん、人間として大きな変化を促してくれました。
これからも仕事に誇りを持ち、成長を続けて行きたいと思います。
卒業に寄せて。
短い間でしたがお世話になりました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。


